Q:「ブショネ」のワインと「酸化した」ワインの違いって、何ですか??
A: この違いが分からないという方、意外に多いですね。実際、ワインの知識がある方でもなかなか説明することが難しい質問でもあります。
ブショネ(Bouchonne-語源はフランス語のBouchon=コルクなど瓶口を塞ぐ栓から来ています)とは、「バクテリアに汚染された状態のワイン」のことを指し、通常コルクの汚染が原因とされています。(ワインの熟成段階で使用する木樽が原因となる場合もあるようです)。コルクというのは自然の植物ですので、そこには目に見えない菌が存在しており、その中に悪性の菌が存在していた場合、ボトル内である種の化学変化が起こりワインの質を変えてしまうのです。2003年現在、フランスワインの全生産量の5~8%、また全世界のワイン生産量の3~7%がブショネであると言われています。1980年代からこのコルクに関する問題は何度となく取り上げられてきましたが、現在では、カリフォルニアやオーストラリアなど新世界を中心にスクリュー・キャップ、王冠キャップ、プラスチック製コルクなどを使用するワイナリーが増えており、それに伴いブショネの問題は減少しつつあります。ちなみに英語ではCorked、Corkie、またはCorked Wineなどと言いますが、そのせいかグラスに注がれたワインの中に「コルクのカスが浮かんでいる状態」のことだと勘違いしている人もいるそうです。それはワインの状態の問題ではなく、ウェイターやソムリエの開栓技術の問題ですので、くれぐれもお間違いのないように。ブショネのワインと一口に言っても、汚染の度合いには差があり、「ほんの少しコルクっぽい臭いが気になる」程度から「こりゃ駄目だ」の段階まで様々です。普段からワインを飲み慣れている方なら、臭いを嗅いだだけですぐにわかると思いますが、飲みなれていない人はこのブショネに気が付かず、そのまま飲んでしまうことも多々あるようです(ちなみに飲んでしまっても人体には特に害はないと言われています。)。また、一瞬「ブショネかな?」 と思っても、実はそうではないという紛らわしいケースもありますので、その見分け方のコツをお教えしましょう。
まず、ブショネのワインとはどんな臭いがするのか。ワインの教科書などでは「カビ臭い」と書かれています。「コルクが腐った臭い」とも言われますが、もっと身近な例を挙げると「雑巾を陰干しした感じ」がぴったりするような気がします。とにかく何とも言えない嫌な臭いがします。ただ、そこまではっきりわかるのは重症の場合で、「そこまでひどくはないけど、ワインにコルクの臭いが付いている気がする、これってブショネ?」と、はっきり断言できないような場合は、まずグラスに注がれたワインを2分程そのままにしておいて下さい。そして何度かグラスを回しワインに空気を含ませます。その後更に1、2分待ってから再びワインの香りを確認して下さい。ブショネのワインであれば、5分前よりも更に臭いが悪化しているはずです(汚染されたワインは空気に触れて時間が経てば経つほど悪臭が強くなります)。また、逆に開栓直後に気になっていたコルク臭がきれいに飛んでしまい、5~10分後には全く問題なく健康な香りを発するという「ダマシ」のケースもありますので、その場合はブショネではなかったのだと判断してそのまま飲まれても問題ないと思います。そのどちらとも言えない場合は、軽度のブショネ、またはブショネでなくともワインに何らかの劣化が生じている可能性が考えられます。
一方「酸化」とは、酸素または高温に長時間さらされたことなどにより、ワインから「果実味などの新鮮な風味が失われた状態」のことを言います。保管または輸送段階における問題が原因となることが多く、例えばコルクの緩みなどにより、隙間からボトル内に酸素が入り込むなどした場合、または何らかの理由でワインが高温にさらされてしまった場合などが酸化の主な原因となります。英語ではOxidized、またはMaderizedと表現されますが、その言葉通り、一般的に酸化したワインからはシェリー臭、マディラ臭と言われるものが感じられるのが特徴です。シェリーやマディラに馴染みの薄い方は、例えば、残り物の煮物を想像してみて下さい。鍋一杯に煮物を作った時など、食べきれない分が鍋に2、3日残ったりします。はじめのうちはかつおだしや野菜や肉などの美味しそうな香りがするわけですが、加熱や蓋の開け閉めを繰り返したりしている間に、3日目くらいにはすっかり「煮臭く」なってしまったことはありませんか?勿論ワインの風味とは違うものですが、本来あるべく美味しそうな香りや味が、疲れて褪せてしまった感じとイメージすると分かりやすいかもしれません。